OWL magazineをはじめて5年、Youtubeを本格的にはじめて1年が経った。
2023年、僕がフクダ電子アリーナを訪れ、ジェフ千葉の話を公開したところ、それから3ヶ月くらいして突然動画の再生回数が増え、いつのまにかジェフ千葉サポーターの友達が増えた。
Ayuta君はその中の一人で、Liveにコメントをしてくれたり、公開しているLINEグループに入ってくれて、積極的に発言してくれた。
そんな君が去って行く。
少し寂しいけど、我々はみんな祝福しながら送り出すことになった。
そう、君は受験生。
大学受験という大きな壁に立ち向かう覚悟を決め、大好きなジェフ千葉と距離をおいてでも挑戦しようと決めたのだ。
素晴らしいことだと思う。
我々の世代になると、そういうことが段々とできなくなっていく。長年かけて成長させてきた小賢しさを悪用して、やらない理由、できない理由を探し始める。
現実を見て無理をしないのが大人になるということでもあるのだけど、そんなことを考えもせず、捨て身で挑戦することの美しさを忘れたわけじゃない。
だから、あれだけジェフ千葉が大好きなのに、それを一旦止めてでも受験に向き合おうとするAyuta君は本当に立だと思うし、心の底から応援したい。
君のことを応援してくれた人は、よく知っている千葉サポの皆さんだけではなく、鹿児島の酒飲みじいさん(鹿児島ユナイテッドサポ)、長野県の小川村という小さなところでMCをしているファンキーなおじさん(、某Jクラブのビッグスポンサーとしてずっと見つめてきたおじさん、北九州を応援する酒好きのおじさん、京大卒で国家公務員をしている過激な青年(セレッソ大阪)などなど。
酒飲みのおっさん、おじさんの比率が高いような気がするが、それはさておき……。
僕は42歳、鹿児島の裏目爺さんはいくつなんだろう。まぁ仮に70歳としよう!!(だいたいあってるやろ!)
それと高校生の君に縁が出来て、OWLの番組を起点にネット上で情報交換をしていった。そういったこともあって、鹿児島のみんなも、段々とジェフ千葉のことが気になるようになって、フクアリで行われるアウェイ戦は見に行きたいと言っていた。
これは僕のお手柄ではなくて、Ayutaくんをはじめとしたジェフ千葉サポーターが好きだから、みんなが大好きだといっているフクアリに行って見たいと思ったのだろうと思う。
サッカーを通じて、縁もゆかりもなかった遠方の、まったく異なる世代の人がつながっていく。共通の話題をむねに仲を深めていく。
サッカーによって、縁がつながり、この世に生きている幸福を感じられるようになる。
これが僕の目指している世界。僕はこれを実現するために、サッカーのために人生を捧げている。こんなことを目指してもお金にはならないから、いつもヒーヒー言っているんだけど、おかげで豊かな人生が送れている。
サッカー観戦はただの娯楽に過ぎない。だから、他のエンタメと同じものだ。しかしながら、日本の全国各地との縁を生み出し、感情の交流を作って行くという恐るべき力をもっている。
これは日本だけではない。
ブラジルワールドカップにて、サンパウロを歩いているアルゼンチン人と何とか会話して、メッシの話をしながらマテ茶をご馳走になった。
クイアバで日本語を勉強している若い女性とそのお母さんとスーパーで話し込んだり、W杯を見に来ていた反日感情が強い中国人の夫婦と偶然一緒にテーブルになり、片言の英語で話し込んで、お互いの誤解を少し解いたりもした。
日本には中国人がたくさんきていて友達がたくさんいると伝えたら驚いていて、さらに三国志が大人気で、僕は関羽雲頂が好きだと言ったら仰天していた。
サッカーは、国家が生み出した流れを無視して、俺たちの世界を作っていく力がある。
先日、ホルムズ海峡で、日本の会社が運営する船が過激派に捕まったことがニュースになった。フーシ派というイエメンの過激な組織によるもので、今はアメリカとイギリスが必死になって攻撃している。
このフーシ派は、アメリカと非常に仲が悪いイランという大国がサポートしていると噂されている。
そう、日本代表をアジアカップで破ったイランだ(その前のアジアカップでは逆に日本が勝っているが!)。
日本とイランには縁が生まれていて、そのため、イランにいってイランのサッカーファンと話すと盛り上がるのだそうだ。「おまえらアメリカとガチで戦争したからすごいよなー」などと言われるらしいけど、その後はサッカー談義に盛り上がれる。
これはぼくの経験ではなくウルトラスニッポンの人に聞いた話なんだけど、本当に面白い話だなと思った。
サッカーは、日本国内を繋ぐ。それだけではなく世界中を繋いでいく。
大学受験の勉強の先にある、本当に大切なもの。人類が共感するために必要なとても重要な発明だと思っている。
だから、我々には、Jリーグが必要だし、ジェフ千葉も、鹿児島ユナイテッドも必要なのだ。柏レイソルも、鹿島アントラーズも、松戸シティも、VONDS市原も必要なのだ。
これから30年。
世界では大きな戦争が起こる可能性がある。いや、既にウクライナとイスラエルでは起こっているし、台湾侵攻が起これば日本は必ず巻き込まれる。
また、大きな災害は日本のどこかで高い確率で起こるだろう。
そんな時、サッカーを通じた縁が、大きな力となるんじゃないかと思っている。
だから、サッカーは必要なものだし、僕はサッカーに人生を捧げることにした。
とはいっても失敗ばかり。今までうまくいったことなんか何もない。
だけど、いつか必ず理想が体現できるよう、少しずつだけど10年間頑張ってきている。
そして、その理想を非常にわかりやすい形で再現してくれたのが、裏目爺さんとAyutaくん。推定年齢差は55歳。だいたいね。
「認知症になる前に戻ってきてね」
裏目爺さんの渾身のボケも、うまく伝わらないくらい年齢差がある。そんな二人が大好きなチームが今年対決する。
流石にジェフ千葉が圧勝するんじゃないかと思うけど、そういう時にコケがちなチームでもあるのでどうなることか。やってみるまで勝敗はまったくわからない。
非常に楽しみな年だし、それを一番楽しみにしていたのが君だ。しかし、それを蹴っ飛ばしてでも自分の目標に向き合うというのは本当にカッコいい!!
思う存分挑戦したらいつでも戻ってきてね。
君の人生初ビールは、僕がフクアリでおごろうではないか!アルコール分解因子がなかったらノンアルビールだ!
いや、それよりももっといいビールがある。
その名前は……。
JEF UNITED Victory Ale
近々発売する『君がJリーグを認めるまで、僕は歩くのをやめない』に出てくるので是非読んで欲しい。
受験期間にこそ本は読んだ方がいい。
100冊、200冊と読んだほうがいい。
今は動画の時代だけど、学問は動画にならない。文字情報の積み重ねなんだ。どれだけ動画が発展しても、論文や文献は文字で書かれる。そうじゃないと後世に伝わっていかないし、正確に記述することができないからだ。
学問は文章で構成されているため、勉強も文章を通じて学んでいく。
だから本を読むのは非常に有効だ。
少し古い本だけど、僕が受験生の時に読んだ本で、『ヨーロッパ近代の終焉』というものがある。この本を読むと、ヨーロッパ的な価値観とそれ以外に分離して物事を見られるようになるので、現代文の入門に最適だ。少し古くさいのでそのままは出ないと思うけど、だからこそベースにはなる。
そして、ヨーロッパのサッカーこそ至上であり、日本やアジアのサッカーは劣等であるという価値観が誤りであることにも気付くだろう。
最後に僕の大好きな言葉を贈らせてほしい。
僕が34歳のとき、人生に迷っていた。
もう年齢もだいぶ来てしまったし、どうやって生きていこうか困り果てていた。
そんな時に、サッカーを愛する先輩から言われた言葉がこれだ。
「30代なんて若いんだから、今からどんなものにでもなれるよ。」
そしてこう続けた。
「僕は、40代半ばにオシムの通訳になって、それから人生が変わったんだから」
そう、イビチャ・オシムの通訳を務め、オシムが没するまで親交のあった千田善さんから頂いた言葉だ。
でも、それには条件があると思う。運命が変わるその日まで努力を続けられるかどうかだ。諦めてしまったら、絶対に勝つことはできない。
サッカーと人生は同じだ。
最後の最後まで諦めずに走り続けたものだけが勝利を手にすることができる。
サッカーと人生は同じだというのは、誰の言葉なのか言うまでもないよね。
イビチャ・オシムは、内戦に巻き込まれ、家族と年単位で会えない中、それでも仕事として真摯にサッカーに向き合い続けた。そして日本を訪れ、ジェフ千葉にはじめてのタイトルをもたらした。
これから何度も何度も失敗するだろうと思う。
受験勉強なんかうまくいかないことばっかりだ。青チャートの数列の問題が意味不明すぎて、シャーペンを思い切り投げて破壊したことがあるし、英単語を覚えるためだけに無駄に山手線を何周もしたこともあった。
そして僕は、絶対に受かると信じて受験したA判定の私立大学にすべて落ちた。早稲田、慶応、上智、法政。全部落ちた。
絶望したし、死にたくなった。
でも、跳ね起きて、もっと高い目標に挑戦することにした。東大受験だ。3科目から8科目に増えるし、難易度も跳ね上がる。
それでも、高い目標を持って挑戦することは楽しかった。
最後の1年。1日16時間の勉強を3ヶ月続けた。
3月からはじめて丸1日休みにしたのは11月3日の祝日だったことをよく覚えている。
11月の終わりになってベクトルがまったくできないことに気付いて絶望したけど、そこから必死に頑張った。
東大受験の当日。最後に残された時間で、地理の復習をすることにした。そこで偶然見たのがシエラネバダ山脈とシエラレオネ山脈の位置関係で、それが何と東大地理で出題されたのだ。
最後の最後まで諦めなかった。試合が終わるその瞬間まで気を抜かなかった。だから、最後には手が届いた。
僕の取った点数は、合格最低点から0.1点だけ上回っていた。だから、シエラネバダ山脈を答えられなかったら落ちていたのだ。センター試験でベクトルの問題を一つ間違えていたら、それでも落ちていた。
最後の最後まで諦めない。挑戦を続ける。自分を甘やかさない。
もしも君がそうやって頑張ることができたなら、きっとジェフ千葉の選手達も頑張ってくれるはずだ。
ジェフ千葉は不滅だ。
本当に苦しい時期があったと思うし、周りから馬鹿にされ続けた時期が長かった。それでも、ジェフ千葉のスタッフ、運営、経営、選手たちは努力を続けてきた。情けない敗北をした試合も山ほどあった。何度も見たことがある。
それでも、手を抜いていた人などいないはずだ。
だから、今、ジェフ千葉は正念場を迎えることができた。円熟の戦力とともに、J1昇格という巨大な目標に向かって、一丸となって挑戦をしようとしている。
それだけの盛り上がりを見せているときに、ジェフ千葉が大好きで、ジェフ千葉のことばかり考えているAyutaくんが、自分の目標に向き合うのは本当に立派なことだと思う。
現地にいけなくてもいい。試合は見れなくてもいい。もしも昇格することができたら「頑張った俺のおかげだ」と誇りに思えばいいと思う。
ジェフ千葉は決して消えない。
本当に素晴らしい歴史を持つクラブだと思うし、千葉の皆さんの深い愛情に守られている。
だからいつでも戻ってくることができる。
そして成長した君は、今よりもずっとサッカーや、ジェフ千葉に貢献できるようになっているはずだ。
ジェフ千葉と違って、OWL magazineは不滅とはいえないんだけど、なるだけ頑張るので、納得行くまで挑戦してほしい。
では!
良い挑戦を!
OWL magazineを通じて知り合った年上の友人 中村慎太郎