世界三大カップ戦なんて大嘘だ。悪いのは全部他人であり、三大なんとかは大体嘘なのである。 

ワールドカップ、チャンピオンズリーグ、ちばぎんカップ。

非常に有名なネットミームであるが、誰も本気で言ってはいない。そして、10年以上もこすられ続けているので、だいぶ飽きられてきている。

そもそも、ジェフ千葉と柏レイソルの試合が、注目の一戦であったのは……、最後にそういうタイミングがあったのはいつだろうか。

千葉ダービーと言われる一戦ではあるが、そもそも千葉と柏は文化圏が異なり、あまり縁がないとされる。ライバル意識がないわけではないだろうが、他の地域に住む人にまで伝わってくるほどの明瞭な対立があるとは思えない。

ぼんやりとした千葉の話

柏は東葛といわれる地域に位置して、住民は千葉都民と言われることもある。

そう自称している場合もあるらしい。

僕は大学院が柏の葉にあったので、縁がある地域だ。流経大柏のすぐ裏である。

サッカーでいうと柏レイソルが王者だが、松戸シティ、Nagareyama F.C.、FC grasion(野田)、鎌ヶ谷SCなどがある。あるというのは、Jリーグ入りを標榜するクラブとして存在しているということだ。

浦安や船橋などは葛南という。

この地域は千葉都民というわけではなく独自の文化がある。一番の名所はディズニーランドであるが、船橋の競馬場、バードウォッチングの聖地の一つ、谷津干潟などがある。

葛南の地域性というものは、東京に近いこともあり非常に見えづらく、まだはっきりとはつかめていない。サッカーでいうと、ブリオベッカ浦安、市川SC、習志野FCなど。

東葛と葛南の地域リーグクラブが、Jリーグに入る日は来るのか。

その熱量や実現可能性は、街によって異なると思うのだが、非常に面白い傾向だと思っている。とすると、一番盛り上がるのは、柏対松戸だろうか。

以前、柏レイソルを応援している、爆風スランプのパッパラー河合さんのラジオに出演させて頂いた時に「松戸シティとの対戦が実現したら熱くないですか?」と聞いてみたところ「それは熱いねぇ!」とお答え頂いた。

松戸と柏はセットでありライバルだし、流山もきっとそうなのだろうと思う。

東葛ダービーである。

野田には清水公園があり、小学校の遠足が3年連続でここであった。雨天時はキッコーマンの醤油工場。それ以上の情報はない。野田クルゼという予備校があったけど、焼き肉屋みたいだとみんな話していた。野田市と関係があるかは不明。

葛南についても盛り上がっていて、市川対浦安は熱い戦いになるのではないかと思う。

とはいうものの、僕の認知している範囲だと、葛南にいる人はよそからきて一軒家やマンションを購入した人ばかりであり、地元を熱く応援するタイプの人がどれだけいるのかはわからない。

柏には偉大なるレイソルがあるため、街への愛情が可視化されている。

柏から世界へ!

というわけで、東葛と葛南という地域はキャラが濃く、歩いていて面白かった。なので、東葛内、葛南内のダービーや、あるいは、東葛vs葛南ということであればかなりの熱気を帯びるのではないかと思う。

そこで、ジェフ千葉の話をしないといけない。

東京から柏へと歩き、鎌ヶ谷、船橋へと歩みを進めていた。このときは楽しかった。しかし、千葉市美浜区(幕張のあたり)に入ってから、急激につまらなくなった。

もちろん、生活するには便利で快適だと思うのだが、街に年季が入っておらず、妙に味つけが薄いように思えるのだ。

「千葉市民で反論したい者は、「千葉みなと駅」という単語を必ず使って反論しなさい。NGワードは「栄町」である。」

そして、不思議なのが、市原市に入ってから、あるいは北側へと歩き、成田のあたりから街の気配が濃厚になった。非常に主観的な表現なのだが、どこかで見た地方都市から、そこだけにしかない街へと移ったような感覚である。

ということは千葉市には何もない。

千葉市のキャラが薄いということが言えそうだ。

そもそも、このようにキャラが薄くなっている理由としては、初期の廃藩置県の際に、千葉県は3つに分かれていたことがあげられる。

印旛県、木更津県、新治県だ。

新治県は、佐原、香取、銚子などと鹿島、神栖などを含む地域であり、サッカーコラムでは言うまでもなく、鹿島アントラーズの影響が強い土地である。

印旛県には柏レイソルの東葛も、ブリオベッカ浦安も含まれる。

木更津県は上総に位置していて、VONDS市原や房総ローヴァーズ木更津、女子チームのオルカ鴨川などが知られている。

この3県は統合されることとなったのだが、利根川の北側だけは茨城県となった。新治県は分断されてしまった。

さておき、今の千葉市のあたりは、印旛県と木更津県の間にあった、人がいない場所であったようだ。

今度図書館で統計資料をしっかり調べるつもりなのだが、当時は長野市よりもはるかに人口が少なかったのだ。

千葉市は新しい街であり、新しく来た人の街であるため、若干キャラが薄い。面白いものもあまりない。これは、1500年近く昔からあると言われている善光寺をもつ長野や、説明不要の京都などと比較するとよくわかることだろう。

ライバルといっていいのかわからないのだが、神奈川県の横浜市についても歴史は浅い。ただ、ペリーによって開港されたときに新しい文化が生まれたことで、急速に発展した。その際の負荷は非常に強かったはずだ。何せ、日本中で、エゲレス人、メリケン人(アメリカ人)がいるのはそこだけだったのだから。

以上のような理由から……!!

千葉vs柏と言われてもピンとこないのである!!

しかも、プレシーズンだから、すっかり腰が重くなっているし、寒い。めんどくさい。正月に食い過ぎてお金がない。正月に贅沢して2月は地獄というのは、もう10年繰り返しているので決して直らない。従って、毎年ちばぎんカップに行こうかなとは考えるものの、面倒になっていかなかったのだ。

されど、今回は事情が違った。

まず、Youtube番組をやっているので、とにもかくにもネタが欲しかった。ネタがまったくないのに、週に3本を更新し続けたオフシーズンなんか大嫌いだ!!

……。

一番の本音から書いた。

2つめは、君Jの執筆で千葉県に超絶ハイパー大苦戦をしていることだ。千葉県を書くのが難しすぎて、もう泣きたくなっている。筆の進むが極めて重い。だけど、書きたい。なので、千葉への愛情を少しでも深められるように、ちばぎんカップには行きたかった。

最後に、帰りに寄りたいお店があったからだ。これについては柏レイソルサポとして、早急に対処するべき問題をはらんでいるテーマだといえる。

いざ、日立台へ!ちばぎんカップへいこう!

というわけで柏駅に到着。

来ていたタートルネックのシャツが油汚れで黒ずんでいて非常に恥ずかしかったので、駅ビルにあった高島屋へと入り、UNIQLOでスヌーピーのトレーナーを購入した。駅にデパートがついているのだ。流石柏駅様なのである。

東京で言うと西の巨人、立川駅様のような駅である。もちろん千葉中央駅も負けていなくて、適当にランチをしたりショッピングをしたりするには最高の場所だ。

蘇我駅には犬のポスターがいっぱい貼ってある。

キックオフまで30分程度しかなかったので、早足で歩き始める。君Jでは、「裏レイソルロード」を通ったので、表のレイソルロードから行くのは久しぶりである。

あれ、柏の街ってこんなに綺麗だったっけ——。

この景色を見れただけでも来た価値があった。

街がふと見せてくれる美しい表情が好きだ。

もちろん、写真家が撮るようなテーマではないのかもしれない。何がいいのかわからないという人もいるかしれない。しかし、その街らしさが現れた構図というものはあって、その瞬間、ああぼくは柏にいるんだと思えて、妙に嬉しい気持ちになる。

そういった瞬間に、空気をすっと吸うと、身体の中に柏が染みこんできて、僕は人知れず、柏の街と少しだけ親密になる。これが好きなのだ。

だから、我々は現地に行かねばならない。歩き回らなければならない。現地の者を食べないといけないし、そこで働く人と交流しないといけない。

そのためには、サッカーがあると非常に都合がいい。

だから、ぼくは、心の底からサッカーを愛していて、サッカーに人生を捧げている。

美しい柏のメインロードから右折して路地に入る。

サポーターをめぐる冒険』でみつけた、ウズラのいるペットショップがまだあることに安心して写真をパチリ。よし先を急ごう。

静岡県と東京から鹿島までを歩いているので、それだけで500kmくらいになる。そのくらい歩くと随分と足腰ができてくるようで、前を歩く人々を次々と追い越していく。最初はユニフォームの人は多くなかったが、段々と増えてくる。そして、それを追い越していく。

そうしていると、本来30分くらいかかる道のりなのだが15分くらいで着いてしまった。

ふふふ。

ビールを買う時間を確保できたな。

日立台公園に着くと、「ちばぎんカップ」の文字が躍っていた。そうそう、これを見に来たのだ。ちばぎんカップの看板だけは年に一回しか見ることができないのだ。そういう割に写真を撮り忘れてしまった。

スタグル広場まで移動し、お馴染みのレイソルカレーへ。この日のAWAYクラブ特集は、喜作のソーセージリスペクトで、カリーブルストであった。カリーブルストというのは、ドイツの定番料理の一つで、茹でたソーセージにカレー粉などをかけたものである。

ドイツ人らしい、適当で大雑把な料理なのだが、これが食べてみるとうまい。当たり前といえば当たり前だ。ソーセージもカレーも美味しいのだから、あわせればうまいにきまっている。

バックスタンドの近くに腰掛けられるスペースがあったので、しばしソーセージとビールを胃に落としていると、スタンドから柏レイソルと、ジェフ千葉サポーターの声が聞こえてくる。

そうだ。そうなんだ。僕は、これが好きなのだ。スタジアムグルメはサッカー観戦の本質ではないと思う。もちろん、大好きなのだが、スタグルでサッカーを語るのは無理がある。

本質は、サッカーを見ながら、声を上げるサポーターなのである。この声を聞くと、どんなに落ち込んでいても元気になる。どれだけ疲れていても胸が弾んでくる。

僕は……僕たちは……サッカーを愛している。しかしそれは、オフサイドがどうのとか、戦術がどうのではない。人間の活力をもっとも強く、かつ、気軽に感じられる場所がスタジアムだからなのである。

もちろんそうではない人もいる。色んな好みがあっていい。個サポでもいいし、箱推しでもいい。サッカーはみんなのものなのである。

さて、試合について。この稿では試合のレビューをするのは趣旨ではないのだが、ざっくりとは書こう。

まず全体としては、柏レイソルの個の力が目立つ試合であった。

最後まで足が伸びてくる、少し身体が触れただけでも重心が安定しているのでふっとばされる、プレスの圧が強い。また、一度ドリブルをはじめると簡単には止められない。

恐らく試合を見た人が全員感じたと思うのだが、やはりマテウス・サヴィオは規格外の選手で、一度ボールを持つと簡単には止められない。ビールを飲みながらぼんやりみていたので、完全には把握出来ていないのだが、ジェフ千葉のディフェンスがうまくコースを切れていた時間はあったように思う。

しかし、後半の勝負所には高頻度でマテウス・サヴィオをボールが経由するようになり、飛ぶようなドリブルで中央突破をしかけていった。

言うまでもないのだが、現代のサッカーで、中央をドリブル突破していくのは至難の業である。ジェフ千葉の選手も非常にレベルが高いため、マテウスサヴィオがJ2では存在しえないJ1トップクラスの選手であったことの証明だろうと思う。

そして途中出場した細谷真大は、昨年の前半はまだ頼りない動きではあったものの、今シーズンは良いオフを過ごせたのだろう。少し身体が大きくなったように見えるし、走り出しからしてラグビーのウィングや、アメフトのワイドレシーバーのように、力強く地面を蹴って前へと向かっていた。

こうなると触っても止められないし、かといって触らないとどうにもならないからファールをするしかないという状況になる。走り出しだけでワールドクラスが感じられる選手になるとは、去年の前半の時点ではわからなかった。

選択肢がなくなり、詰まったときに器用に切り替えることはできないので、あくまでもフィニッシャーなのだが、大迫のように器用なパスもできるようになったら……。楽しみな選手である。

が、柏レイソルの不安なポイントはこの細谷である。夏の市場で移籍してしまう可能性が高いのだ。もしも細谷真大が移籍してしまったら……。

その時どうするのだろうか。井原監督のサッカーを見ていると、どういう目的でオフェンスを組み立てているのか狙いが見えづらい。何となく攻撃をしているように見えてしまう。もちろん、狙いはあるのだろうと思うのだが、どうにも見えづらい。

それは結果として、ピッチ上において、柏レイソルが明らかに有利という局面が作れていないということなのだろう。森保ジャパンにおいては、サイドで伊東純也や三笘薫がボールを持つと、高確率でチャンスが訪れる。

しかし、柏レイソルは、全選手が素晴らしいのに、どこが強みだかよくわからないサッカーになってしまったように見えた。だから、個の力としては凌駕しながらも、1−2で敗北という結果になった。今シーズン、大丈夫かな……。

ただ、選手の仕上がりはいいと思うし、犬飼、小屋松のパフォーマンスも素晴らしかった。細谷も後半出場であったこともあるため、プレシーズンなので、決定的な戦術は出さないように調整していたのかもしれない。

マツケン!!踊り出せ!!サンバだ!!

ジェフ千葉の目線からみると、思うようにやらせてもらえないJ1の圧の強さを感じられたと思う。抜いたと思っても足が伸びてきたり、J2相手ではほぼ勝てていた空中戦でも競り負けるシーンなどを見ていると、東京ヴェルディへと移籍した見木友哉はさぞ苦戦するだろうと感じた。

でももし、J1を戦う弱小チームで、2桁得点をとって残留させるということがあれば、海外や代表入りも見えてくるはずだ。見木は面白いチャレンジをしたと思う。

その見木と入れ替わるように入ってきた16番、横山暁之には強く期待している(最初は16番だれやねんとなったのは内緒である)。

心の整い方がワールドクラスなので、シーズンを通しての成長と、高水準の活躍が期待できる。実際にプレーをみて思ったのは、最初は柏レイソルのJ1上位クラスの圧力には対応できていないというものだった(柏の選手は個の力は上位でいいと思う。なのに勝ち点が少ないのは闇の力によるもの?)。

しかし、90分走っても精度が落ちないし、集中力もまったく変わらない。そして、同じレベルのプレッシャーであればだんだんと慣れて対応できるようになっていく。いい選手だ……。

君Jを発売して、本が売れたら横山のユニフォームを買おうかなぁ。ユニフォームはほとんど買ったことがないのだが。

そして最前線に10番が立っていた。あれ、ジェフ千葉の10番は……。

フナヤマ……、ではなく、見木友哉だったはずだ。

そうだ。そういえばそうだった。変わったのだ。

今年から10番を背負うのは、HERO。

犬の世界のHERO、北陸が生んだストライカー、小森飛絢であった。

去年は呉屋選手がスタメンで出場することが多かったのだが、今年は逆なのだろう。呉屋を使うか、小森を使うかは、フットボールマネージャーというゲームで擬似的に監督をしてみて、一番悩むところであった。本当に難しい。しかし、今年は小森なのだろう。

YOU NEED HERO!!

この試合の小森飛絢は、先制点をあげる。ゴール中央でボールをもって、キックフェイント、そして、右に流して最後は高橋一晟が打ったシュートがこぼれ、これを押し込む。

まるで未来の光景が見えているかのようだ。これが小森飛絢の真骨頂。ゴール前中央という狭いところで、冷静にキックフェイントができるのは、かなり余裕を持ってまわりが見えている証拠。

僕のような勢いだけの選手がやる場合は、もう撃つと決めたらすぐに撃ち込む。どうしても撃てないときにはじめて仲間を探す。しかし、小森飛絢には見えていた。そして、右に流したあと、余計なうごきをせずに停滞する。そして、ディフェンスがいないところを見極めて、素早くつめて押し込む。

これは、20得点いくかもしれない。オフシーズンの間に、かなりイメージトレーニングもしたのだろうと思う。東京ヴェルディとのプレーオフでは、最後に出場してきたが、決めきることができなかった。あのときのすべてが、昨シーズンジェフ千葉のユニフォームを着て戦ったすべてが、小森飛絢のメモリーに刻まれている。

楽しみだ。本当に楽しみだ。こういう選手が見たいから、サッカーを見ているのだ。

永久に終わらないのでもう一つだけ書くと、途中出場した呉屋大翔がすごく良かった。

去年の呉屋はスタメンで出ているものの、どこかメリハリが利いていない、中途半端なポジションどり、抜けだしが多かった。何としてもボールに足を当てて強く撃ち込むという、最後の最後の一押しも足りていなかったように思えた。

もちろん、それはサボっていたわけではないだろう。高度なポジショニングが要求される小林慶行監督のサッカーをする中で、FWとしてのロールを埋めるのは外から見ていてもわからない大変さがあるのだろうと思う。

しかし、途中出場してきた呉屋は、非常にメリハリが利いていた。

大きく手を上げて、バスケでいうCカットのような滑らかなコースをしながら、CB裏へのパスを要求した。外でみていても呉屋が何をしようとしているのかは明白だった。そのシーンでは特に何も起こらなかったのだが、ディフェンスは呉屋に注目して少し釣られることもあるので、スペースができる。

そこにドゥドゥや横山が暴れたり、田口があがってきてパスをさばいたりということが想定できる。役割が絞れた分、呉屋の活躍も期待できるのではないだろうか。

そして、呉屋選手……。遠目に見てもかっこよすぎる。

後ろ姿すらイケメンという異次元のかっこよさ。なんだろう、この生き物。ちょっと反則だと思う。別に好みの顔というわけではないのだが、呉屋だけは別格だ。フォルムまで含めて完璧すぎる。今年はもっとゴールが見たい。

それは目を疑う光景であった。ゴールからの距離は30メートル。ディフェンスはほんの一瞬の油断をしてしまった。ボールを持ったのは呉屋。ここからのシュートはないだろう。その瞬間、呉屋は思い切り右足を振り抜いた。

それはまるでスティーブン・ジェラードのシュートのように、燃えさかる弾丸となってゴールを突き刺した。ゴールキーパーは1歩たりとも動けなかった。

去年までの呉屋では絶対にシュートはなかった。一度まわりをみてパス相手を探していたはずだ。しかし、今年の呉屋には一切の迷いはない。

駆け寄る犬の仲間達。満面の笑みで喜ぶ呉屋。しかし、呉屋の表情はすぐに真顔に戻る。いつまでも喜んではいられない。ベンチには、途中交代で下がった天才が座っているからだ。

小森飛絢。

この天才には負けられない。超えられるわけにはいかない。いや、もう超えられたかもしれない。だけど、負けられない。絶対に負けられない。試合の勝敗よりも、俺にとっては小森飛絢に負けないことが大事なんだ。あと10分、もう1点取りにいく。ベンチで見ていろよ、飛絢。

即興・妄想小説『かっこよすぎるぜ!!呉屋大翔きゅん!!』より


というわけで、ビールを二杯とカリーブルスト、唐揚げ君で上機嫌になり、後半は雑にしか観戦できていないわけだが、非常に楽しかった。

帰り道ではこんなことも。

日立台公園を出て、レイくんちゃん様がの石像がある交差点。ここを北上するとレイソルロードから柏駅へ。その左側の道あるいは反対の南側へとを進む。

この道は、いつ出るねんと言われ続けつつ、泣きながらずっと書いている書籍『君がJリーグを認めるまで、僕は歩くのをやめない』において、裏レイソルロードと名付けた。

新柏駅へと抜けていく方法もあるはずなのだが、まだ試していない。

柏へ向かうレイソルロードとは異なり、裏のほうはご近所さんが進むことが多いはずだ。そこを進むと、先には南柏駅がある。南柏駅は常磐線しか通っていないので、わざわざ南柏に行く意味はない。

しかし、恐らくこれからは、南柏から帰るほうが良いだろう。

何故ならそこには……。

南柏へと向かう道は決して面白くはない。見所になるのは、柏ヤングボールと柏タクシーの営業所くらいのもので、あとはひたすら住宅である。住宅に吸い込まれていく黄色い家族を眺めるのは楽しくはあるし、東武アーバンパークラインの踏切も味わい深いのだが、それ以外には何もない。

いや、柏ヤングボールのちかくにある「めん吉」というラーメン屋はシンプルながら濃厚で、心底美味しいので、ここを目当てに進むのもいいだろう。もう少し開拓したら色々とあると思うのだが、柏駅に比べると、飲食店の店舗数は10分の1以下であろう。

しかし、南柏駅にはクラフトビールのお店ができたのだ。しかも、その店主は柏レイソルのサポーターである。そのくらいなら珍しくないのだが、世にも珍しい、最近応援し始めたレイソルサポなのである。30年近いサポーターのほうが逆に良く会うくらいのもので、サッカーから受ける新鮮な感動をポストする店主のXアカウントは必見である。

さて、このお店。どんなところだろう。頑固な職人さんがいる気まずいお店ということもあるにはある。クラフトビールだから美味しいかというと、期待外れのことも……、言いづらいのだが結構な頻度である。

冷蔵庫から瀕死の缶を出してきて、それを適当に注いだものを提供され、温度も適当、グラスの洗浄も適当で、これならホッピーを自分で作るほうがずっと美味しいよ!! ということもあるのだ。

クラフトビールは単価が高いので、その分こちらの要求も高い。しかし、クラフトビールという存在は、サッカーを語る上で、非常に大切なのだ。

先日も、COEDO KAWAGOEのサポーターと意気投合した。地域に密着するクラフトビールと、サッカーの相性はいいはずだ、と。彼はビールきっかけでCOEDO KAWAGOEを応援し始めたのだそうだ。ベイスターズファンなので、近くはないはずなのだが。

さておき、このクラフトビール屋さんはどうだろうか……。

確かめる方法は行って見て、飲んでみるしかないのだ。

店内は落ち着いた照明で、ハイチェアーが6〜7席くらい。団体様にはテーブルも出してこれるようだが、カウンターバーとしてのんびり喋りながら楽しむスタイルのようで、先に入っていた男性が二人、店主と話していた。

ビールを2杯ほどいただいて颯爽と帰るつもりであった。娘と一緒にゲームをする約束をしていたので急がねばならない。

ビールは8種類。定番のサッポロ黒ラベルに加えて、クラフトビールが7種類ある。

悩んだのだが、最初はMerckx(メルクス)という松戸で作っているビールを頼んでみた。松戸といえば、柏の隣町である。

トラピストビールをイメージした深みのあるビールとのことであった。マスターがグラスを持ってきてくれたので、一人乾杯。ちばぎんカップに乾杯!

グラスをみてびっくりしたのだが、泡がほとんどない。

あれ……?これは……?

ビールという飲み物は酸化を防ぐために泡で蓋をすることが多いのだが、このビールについては蓋がないのである。ということは……。もしかしたらこのお店は外れなのだろうか。

しかし、飲んでみないとわからない。飲んでみよう。すると、冷たすぎず、柔らかな口当たりで、ビールの豊潤な香りがピタピタと口の中を叩いていく。これは美味しい……。

もしかしたら缶の都合であまり泡がでないのかもしれない。その時はそう思った。しかし、それはまったくもって違っていた。このビールは、なんと樽生なのである。

つまり、缶や瓶のビールを冷蔵庫で冷やしておいて、バーテンダーが注ぐというスタイルではなく、専用のビアサーバーがあるのだ。

それも8個も、だ。

それを知った時、驚愕した。あ、ここはすごい店だ。店主はすごい飲食人なのではないだろうか。などと持ち上げると嫌がられてしまうのでこのへんにしよう。

ビアサーバーの管理はめんどくさい。都度、酒屋さんに運んできてもらわないといけないし、設置したり、調整したり、洗浄したりする手間がかかる。

だから1つあるだけでも面倒なのだ。「うちでは生ビールはおかない」と、僕の愛する新宿ゴールデン街で何度も言われたことである。生ビールが飲める店はあるのだが、300店舗もあるわりには少数派で、面倒だからいつもハイボールなのである。もっとも、お店の人が適当に作ったハイボールはざっくりとしたワイルドな味わいで美味しい。

横の壁をふとみると、柏レイソルのポスターが貼ってあった。その下に見慣れないポスターがあり、よくみるとNAGAREYAMA F.C.であった。

はじめてみた!流山FC!!

しかし、ここは柏のはずなのだが……。

横のお客さん達がサッカーの話で盛り上がっていた。今日のちばぎんカップに来ていたわけではないようだが、こちらも少しずつ酔ってきたので、会話に入ってしまった。OWL magazine名物、居酒屋トークモードである。

そこからはとても楽しい時間であった。ずっとビールを飲んでいた。ずっとお話をしていた。娘との約束を忘れ、次の日怒られることになるのだが、そのくらい楽しかった。

最後にNAGAREYAMA F.C.の選手達がノンアルコールビールを目当てにやってきた。選手達と話したり、一緒に試合を見たり……。

なんで流山の選手が来たのかというと、南柏駅は柏市の端っこで、すぐ先は流山市なのだそうだ。ということは、ここは、新興のNAGAREYAMA F.C.と、古き大きなクラブ柏レイソルが、ぶつかり合う場所といえるのかもしれない。

もちろん、今は比較する必要などないほどの大きさの違いがある。柏レイソルはJ1、NAGAREYAMA F.C.は千葉県リーグである。千葉県リーグ1部は、強豪が多く、関東リーグにあがるためには非常に厳しい戦いを勝ち抜く必要がある。

細かいことはいいんだよ。だって、店主のいれてくれる生ビールが本当に美しいのだから。さっきのビールは泡が少なめだったのは、きっと理由があるのだろう。今度いったときに聞いてみよう。

クラフトビールを飲みながら、5時間近く滞在する。ちばぎんカップが作ってくれた最高の時間に感謝である。

J League 2024 Coming soon!!

お読みいただきありがとうございました。

著者の中村慎太郎です。久々にウェブに、しっかりとしたサッカー記事を書くことができました。我々OWL magazineは少しずつですが、前に進んでいます。

このテキストは、居酒屋トークをしているYoutubeと同時に公開しています。

Youtubeはこちらから!!

OWL magazine ながらで聴ける居酒屋サッカートークの極み

Youtube版ちばぎんカップ Link

📝歩いて日本一周、サッカー旅の記録
https://owlmagazine.jp/archives/700

『君J』の詳細はこちら
https://kimi-j.nishikasaibooks.jp

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参考記事
西葛西出版での飲み食いするときのあれこれ