6月。
書籍『君がJリーグを認めるまで、僕は歩くのをやめない』の執筆をはじめる。字数は概ね10万字を想定する。

丸一ヶ月。執筆に集中することができる。
これはとても幸福なことであり、僕が人生において最も望んだことだ。

書き物をして生きていきたいとずっと思ってきた。
でも、それは書いたものを高額で売りたいとか、それによって名誉を得たいということではなかった。もしも僕に、そのような社会的欲求が強くあったのならば、もっと社会的に成功していることだろう。

僕は、文章を書きながら、自分のテーマと向き合う時間を愛している。

好きな音楽を聴いて、コーヒーを飲みながら。時にはビールやウィスキーを飲みながら。書きたいことを書く。

時には、文章が進まなくて辛いこともある。プレッシャーに押しつぶされそうになることもある。そして、実際に潰れたこともある。

だけど、僕のアイデンティティは物書きなのだ。何度失敗したとしても、僕がやりたいことは文章を書くことしかない。だから、また文章に挑戦する。

動画の時代、漫画の時代。
文章はなかなか読まれない。
だけど、やっぱり読んでもらいたい。
そのためには頑張ろう。

でも、どうやって頑張るのか。

ぼくは書きたいことを書く。
だけど、それが、読者が読みたいことと一致するように心がける。

僕が書きたいこと = 読者が読みたいこと

これが最も理想的かつ倫理的な状態だ。

ぼくはサッカーについて書きたい。なぜならサッカーが好きだからだ。そして、地域についても書きたい。人間についても書きたい。

そして、国内サッカーの地域密着を、その価値を証明するという筋立てで書き上げていく。

ぼくの書いた文章は、誰かの人生を肯定することに繋がっていくと思う。あるいは、そのような価値ある生き方、サッカーと共に過ごす人生の意味を伝えることで、誰かを幸福にするかもしれない。

そのために書く。

それがすべて。

ただ、本格的な執筆を続けるには、やはりある程度は仕事にしないと続けていくのは難しい。本来的には、貴族の義務として、奉仕の精神で書くべき何だろうと思う。

ゴシップ記事のようなものを書いて、高値で売りつけようと努力をする者は、僕に言わせると物書きではない。情報屋というべきだろう。情報やゴシップを売るためのメディアが文章なのであって、文章が書きたいわけではないのだろう。

ぼくの場合は、純然たる意味で文章を書くのが好きなのだ。
もちろん、純粋だから良い、優れていると主張するつもりはない。

ぼくにとって文章は「手段」ではなく「目的」なのである。

これは最近わかったことだった。
多くの人にとって文章は「目的」ではなく「手段」なのだ。

注目を浴びるため、のしあがるため、コネクションを作るため、お金を稼ぐため。

全く否定はしない。それでいいと思う。
ただ、僕は違う。
僕は文章が書きたい。だから、自分が書きたい文章を思う存分書ける環境を必死に整えた。

だけどこれまで、自分が書くよりも、他に書きたい人がいたら、その人を優先することが多かった。僕は裏方として、編集者として、誰かのために奉仕した。

多分僕は、同じ「文章を目的とする者=物書き」の友人が欲しかったのだと思う。きっと孤独を感じていたのだ。

だけど、どうもそれは違っていた。
奉仕という行為は、自らが満ち足り、家族や周囲の人が満ち足りたあとに行うものだ。順番が違っていた。こちらにも余裕がないからうまくいかないことも多かった。

僕は、自分が書くことで、人生を変える。
何度でも変えていく。

文章とは世界の創造だ。
自らが紡ぐ世界の中では、自分は特別な存在となり、世界の主人公として思う存分暴れ回ることができるのだ。

であれば創作をすればいいのだが、それについてはうまくいったことがない。僕は今のところノンフィクションしか書けない。だから、自らが大冒険をして、それを描いていくことになる。

Jリーグのサポーターが渦巻くスタジアム
ワールドカップに沸くブラジル

ぼくが冒険したのはこの2つだけ。
タクシーの世界も大冒険であったが、こちらは企画が成就する前に力尽きてしまった。こちらはやり残しなので、いつか必ずやり通したい。

この一ヶ月は執筆のことだけを考える。
とはいっても、実際にはそうはいかない。

まずは家事と育児。
癌を患い生死の境を彷徨った妻は、もう命の別状はないものの、まだ体調不良が続いているので、家事や育児を手放すことはできない。

通常業務として記事の作成をしないといけない。こちらは月5万字程度。多いと思うか少ないと思うかは業務経験によると思うのだが、なかなかの量だと思う。

自分で文章を書きながら、ブックデザインなどを相談して手配していく必要がある。

OWL magazineの記事も更新していきたい。

Youtube。

そして、書籍の先行販売のPR。

何のかんのでマルチタスクにはかわりがないのだが、この半年を考えると今が一番整理されている。

梅雨の間に、柏、千葉、市原、佐原、鹿行のエリアへの大冒険を書き上げる。

梅雨があげたら、暑さにめげずに、旅を再開する。

可能なら今年のうちに北海道までは到達したい。
君Jの売上がよく旅の資金が貯まるようなら、もしかしたら新潟くらいまではいけるかもしれない。

さて、執筆は具体的にどうやって進めていくか。

まずは、抽象的なテーマを定める。これについてはある程度決まっているのだが、濃縮させて結晶化させていく。

例えば拙著『サポーターをめぐる冒険』は編集者の木瀬さんが「サポーターの可視化」という結晶を与えてくれた。恐らく木瀬さんが意図していたのは、サポーターという人たちがどういう存在なのかを見えるようにするということであったと思うのだが、僕が辿り着いたのは「自分がサポーターになる過程を綴る」というものであった。

この思考プロセスについては、先行販売の購入者限定でお届けしようと思う。

同時に一日目から書いていく。
多分一日目の初稿は使い物にならない。
文章は何度も何度も書き直すことで次第に研ぎ澄まされていく。

ウェブ記事であれば一回書いてポンと出してしまうことはあるだろうが、書籍の場合には、紙に印刷することもあって、薄いテーマや内容、稚拙な文章では読みづらいものになってしまう。

とにかく、あまり面白くなくてもいいから一日目をざっと書いてしまうことが大切だ。物語が動き出せば、自然と加速していく。最初の動かすところが非常に難しいのだ。

西葛西から北上。
柴又を経由し、矢切の渡しで千葉へ。
松戸を通って柏へ。

こう書けばたった三行で終わる。

そして、「長い距離を歩いたので疲れた」という一次的な感想を書いて、写真をのせればブログ記事の完成である。それは、そういうログを残しているので良いのだが、本の文章としては薄味すぎて役に立たない。

かといって最初からあまり味付けが濃すぎても、胃もたれしてしまって読み進めることが難しい。

軽やかな風が吹き抜けるような。

引っかかることないさらりとした読み口で。

それでいて、この先に始める大冒険への期待に胸が小さく鼓動する。

そんな書き口を目指して。

というわけで、一日目は、身の回りを整えて、溜まりに溜まった家事と事務仕事を終わらせ、片付けをしておしまい。

父が怪我をして入院してしまったのでお見舞いにもいく。

明日はとにかく書き始める。
書く材料は、歩いている途中に取ったメモと写真。
あとは、気分の良くなる音楽。

明日は大雨らしいんだけど、どこで書こうかな。

『君がJリーグを認めるまで、僕は歩くのをやめない』
先行販売 あと29日!!

https://greenfunding.jp/lab/projects/7310


「進行状況」
序文 4570字

初稿完成度 約5%